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晴れ間がのぞく/原 藍子 個展

【長い旅のはじまり】

期間 2025/2/15(土) – 3/2(日)

時間 11:00-19:00/最終日17:00迄

休廊 2/17(月), 25(火)

問合せ contact@diginner.com

先日、原たちの家を訪れた。たち?とは、夫も日頃から大変世話になっているフォトグラファーだから。彼らの間に赤子が生まれたのがおよそ一年前、赤子はすっかりお嬢ちゃんになって、感情剥き出しに部屋中を動き回っていた。柔らかな日差しが注ぐ昼下がり、とても和やかな時間に少し目が潤んだ。

結婚前の彼女は毎日仕事に忙殺される日々を送っていた。大好きな登山は時に断念せざるをえない。仕事の合間を縫っては、好きな山々を想い針を進める。カンヴァスの上に現れた山は、とても詳細に描かれ、山が映す刻や季節を見事に表現していた。山に登りたい強い願望はいつしか妄想に移り、数多の山を踏破してきた経験から、空想上の人物を、その人が背負う物語と共に、架空の登山ルートをイメージした妄想山を描く程にまでなっていた。

 先日お邪魔した際に、製作途中の新作を見せてくれた。直感的に選んだという色糸が開放的に、まるでラフスケッチのように生地の上を走り、山景を描き出していた。これまでの念のこもった糸の集合体から逸脱した、脱力的な刺繍の手法は正直胸に刺さった。目に映る山の細やかなディテールを丹念に写し取っていた彼女が、いつしか“馳せる思い”そのものを形にするようになったのだ。彼女の新作を眺めながら、そんなことを考えていた。

本展では大小十数点に及ぶ新作をご披露致します。ZINEやその他商品もご用意する予定です。乞うご期待ください。

◆Statement/ステートメント

これまでの旅で見た山々を再考して生まれた作品です。
2023 年 3 月、私の腹の中で一人の人間の心臓が動き始めました。点滅する小さな丸いもの

は、だんだんと人の形を成し、いよいよ酸素を吸い、光を浴び、立ち上がり、みるみると人

間になっていきました。このおよそ2年の間、ふわふわした体温に満たされた私の暮らし

は変わり、以前のような山登りには出かけず、新しい旅に上書きされない、これまで見てき

た景色を思い返す日々でした。
さまざまに深く深く考えていました。
そうしていたら、私の刺繍は自由になりました。

直感的に選んだ糸は、感覚をまとった風景であり、溢れ出す言葉にならない感情は、幾つも

のゆらめく糸の線となって、山を構成しました。

出来上がった作品は純度を増し、歩く喜びを内包しています。

まるで、日差しのぬくもりの中、揺れる薄いカーテン越しに見る窓辺の景色のように。

意気揚々のしのしと歩く、⻑い旅がはじまったばかりの彼女へ、私の旅を贈ります。 

◆Profile/プロフィール

晴れ間がのぞく刺繍作家・原藍子。
1989 年 愛媛県新居浜市に生まれる。大学進学とともに上京。2012 年 日本大学芸術学部映 画学科を卒業。映像制作の仕事に忙殺されながら、山登りを始める。2017 年 山の刺繍「晴 れ間がのぞく」をスタート。現在は家族で東京・高尾に暮らし、晴れた日は近くの山を散歩、 雨の日や夜は山の刺繍作品を制作している。実際に歩いた山や、眺めた稜線、憧れている海 外の山、存在しない架空の山など、街にいても、ふと山に思いを馳せることができる刺繍を 目指して。

【略歴】
1989 年 愛媛県生まれ
2012 年 日本大学芸術学部卒業

2017 年 山の刺繍「晴れ間がのぞく」をスタート
2020 年 高尾山のふもとへ移り住む
2021 年 三人展「妄想山展」、個展「ビールにまつわる3つの三山」
2022 年 出展「MY STYLYNG STORE」、出展「ARTDOOR」
2023 年 三人展「妄想山展 vol.2」、出展「INSIDE and OUT」「道後アート 2023」 2024 年 個展「ふもとから、ヤッホー」

【WEB】
HP https://www.haremaganozoku.com/
Instagram https://www.instagram.com/hara.aiko_haremaganozoku/

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