DIGINNER GALLERYでは、愛知県名古屋市出身・在住アーティスト伊藤潤の初個展を開催致します。

収集した古物等をモチーフにした静物画を発表します。現代に更新された新たな静物画のカタチをお楽しみください。

JUN ITO|伊藤 潤 個展

【BETWEEN BOUNDARIES】

期間 2026年2月21日(土)- 3月8日(日) 

時間 11:00~19:00/最終日17:00迄 

休廊 2/24(火)、3/5(月)

Opening Reception Party 2026/2/21(Sat) 18:00~20:00

本展で発表される静物画には、人骨や漂流ゴミ、使い古された日用品などがテーブルの上に置かれ、死や時間の儚さを静かに想起させる。そこには、中世西洋美術の「ヴァニタス」を思わせる寓意性が漂うが、伊藤自身はその美術史的な概念や文脈を意識することなく、あくまで油彩という古典的技法を用いながら、現代の日常にあるモチーフを描いてきた。その結果として立ち現れているのは、過去の形式をなぞるものではなく、現代において新たに更新された静物画の姿である。

伊藤は、描く対象を「分割/連続」させる独自の構成によって、ひとつの画面に複数の時間や視点を重ねることを試みている。私たちが何かを「視る(認識する)」行為には、視線の移動や焦点の調整といった時間が不可欠であり、そのプロセス自体を絵画空間へと置き換える装置として、この手法が用いられている。

静物シリーズの起点となったのは、父親の遺骨を描いた一枚であった。死別をきっかけに衝動的に描かれたその作品は、後にシリーズへと展開していくが、振り返ると、選ばれてきたモチーフの多くが「本来の役目を終えたもの」であったことに気づく。漂流ゴミのプラスチックボトル、血痕の残るティッシュ、使い切られた絵の具のチューブ、成長とともに履けなくなった娘の靴や玩具、瓶や欠片、古道具、骨…それらは一見すると不要なものとして分類される存在でありながら、作家の視点を通すことで、機能と非機能、生と死、記憶と忘却の境界を揺さぶる強い存在感を帯びて現れる。

例えば、経年劣化によって白く退色したプラスチックボトルは、役目を終え捨てられた存在である一方、捻れた造形が際立ち、まるで白装束を纏ったかのような清らかさを感じさせる。娘の靴や玩具には温かな記憶が宿ると同時に、使える状態であっても短期間で役目を終えてしまう、成長に伴う不可逆的な時間が刻まれている。

伊藤は、モチーフの意味や象徴性を断定するために描いているわけではない。分割と反復によって「視る」行為に時間を与え、その中で、役目を終えたものがどのように立ち現れてくるのかを探り続けている。こうして生まれる画面は、静物画であると同時に、時間や境界が揺らぐ空間表現でもある。

本展では、静物シリーズ初期の作品から最新作までを通して展示し、モチーフの変遷とともに、作家自身の「ものの見方」がどのように形成され、更新されてきたのかを提示する。鑑賞者それぞれの視点の中で、描かれたものがどのように立ち上がってくるのかを、あらためて確かめてほしい。

◆Statement/ステートメント

“BETWEEN BOUNDARIES” (和訳:境界のあいだ)

目の前のものを「視る(認識する)」には、視線の移動やピントの調整、理解に至るまでの「時間」が伴 います。私は「視る」という行為を、モチーフを分割/連続させる構成によって可視化し、その「時間」を 画面に重ねる表現を模索しています。

近年は、身の回りにある道具や蒐集物、漂流ゴミ、娘が使わなくなったもの、骨や欠片などの静物をモ チーフとしています。静物シリーズの最初の作品は、父親の遺骨でした。当時は静物画としてシリーズ化 しようという意識はなく、死別をきっかけに衝動的に描き始めたものです。振り返ってみると、その後に選 んできたモチーフの多くが、「本来の役目を終えているにもかかわらず、なお在り続けているもの」だった ことに気づきます。

生と死、使えるか使えないか、残されたものと忘れ去られるもの— —それらの間に引かれる線は、誰に とっても同じではありません。自分の視点を通して見たとき、その境界は曖昧になり、かえって生々しい存 在として立ち現れ、描く動機が生まれてきました。

私はモチーフの象徴性を断定するのではなく、「視る」という行為そのものを平面空間へと変換し、そこ に浮かぶ時間やモチーフに内在する境界の揺らぎを探っています。

本展では、静物シリーズ初期から新作までを通じて、自分がどのように「もの」を見てきたか、その変化と 継続の中に、改めて自分自身の「まなざし」を問い直す場としたいと考えています。


◆Profile/プロフィール

伊藤 潤

略歴

1984年生まれ。愛知県名古屋市出身・在住。2009年名古屋市立大学芸術工学研究科修了。 大学在学中より、木炭やパステルによるドローイングを制作。以降も画材を試行しながら、平面作品を中心に発表を続 けている。新聞社でのデザイナー職を経て、2023年より個人として活動開始。 現在は、作家活動と並行してデザイン業にも従事。ミュージシャンへのアートワーク提供、イベントのビジュアル制作、エ ディトリアルデザインなどを手がけている。妻で作家の奥田早織と共有する作業場「RIM」を拠点に、共作によるプロダ クト制作や展覧会の企画・運営も行っている。 絵画作品では、描く対象を「分割」し「連続」させることで生まれる差異を通して、“時間”を感じさせるイメージを探っ ている。この分割の試みは、自作アニメーションを投影するために板を並べて作った装置(立体のスクリーン)に由来す る。近年は父親の遺骨を描いた作品をきっかけに静物をモチーフとしている。

ま た 、分 割 的 視 点 と は 異 な る ア プ ロ ー チ と し て 、内 面 に 浮 か ぶ イ メ ー ジ や 記 憶 の モ チ ー フ を 直 感 的 に 描 き と め る 「PATCH SERIES」の制作も継続している。

個展(抜粋)

2025 「Repoint」| RIM(愛知県名古屋市) 「DIVISIONOFVISION」| Cy(神奈川県鎌倉市)

2024 「現自点」| 新町ビル1F(岐阜県多治見市)
   「NO THREADS ATTACHED」| doodle and haptic(静岡市) 「NO THREADS ATTACHED」| NA.N.DE(. 東京都)

2023 「現自点」| RIM(愛知県名古屋市) 「寄道」| 幾何うアトリエ(東京都) 「現自点」| Cy(神奈川県鎌倉市)

2022 「現自点」| 1階アトリエ(愛知県名古屋市) 2021 「時我像」| 大大大(愛知県名古屋市) 2020 「現自点」| 1階アトリエ(愛知県名古屋市) 2018 「現自点」|spaziorita(愛知県名古屋市) 2013 「今の自分」| 百想(東京都武蔵野市)

グループ展等(抜粋)

2025 「新町ビルエキシビジョン2026 -はじまりのかたち-」| 松坂屋名古屋本館(愛知県名古屋市) 2024 「swipeyard」|CEKAIO!KSTORE&SPACE(東京都)

「A.N.D. presents MAPS # 7 NAGOYA DELTA FORM」| RIM(愛知県名古屋市) 2023 「VISION」| fons(愛知県名古屋市)
2022 「縁界」| 1階アトリエ(愛知県名古屋市)

「“Intro” CONTEMPORARY ART EXHIBITION」| 岩田屋本店(福岡市) 2021 「play8hours」| 阪急有楽町(東京)
2020 「MerchDealMobstore」|voyagekids(大阪市)
2019 「TTT」|spaziorita(愛知県名古屋市)
2018 「SMOKE」| スナックやまびこ跡地(神奈川県鎌倉市)
2016 「5W POP UP SHOPとの合同」| analog/too(l 愛知県豊橋市)

「三つ目が行く!!」(2人展)| アパートメントストア(愛知県名古屋市)

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